【びぃどろ講座】1枚の「親子の食事写真」

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先日、知人から急に1枚の食事風景の写真が送られてきました。今日はそのお話です。

食事風景をみる視点

送られてきた写真はこちら

この写真をみて「はい、ST目線でなんか言って」とのこと。

なんか言って・・・
なんか言って・・・
なんか言って・・・(;´Д`)なんでやねん

そこで、わたしなりに1枚の写真から、気付きを解説することにします。

謎解き探偵、びぃどろ⁉

私が注目したのは、このフォーク。

きっとお母さんのパスタを取り分けてあげているところかな、と思います。さて、この親子の手元を見ると、あれ?フォークは1本しかありません。そう、おかあさんのフォークで食べているんですね。

このお子さんは、まだフォークを上手に使える年齢ではなさそうです。ですから、お母さんが食べさせてあげる、これは当たり前なのですが、おなじフォークを使うことについて、少しだけお話を広げていきましょう。

やっぱり気になる虫歯の話

よく、「同じ食器を使うと、虫歯菌がうつる!」なんて言いますね?
お子さんが生まれて初めのうちは、なんとなくみんな気にするんですが、毎食毎食それぞれ別の食具を用意するって、すごく面倒くさいですよね。しかもいつまで続ければいいのかわからない。外食行ったら用意していられない。洗い物も増える・・・良いことないですものね。そんなことをしているうちに、だんだん面倒になって、気がつけば同じ食具で食べさせるようになっていた。なんてこと多くないでしょうか?

でもこれ、じつは大切なことなのです。

虫歯菌ってどこに行く?

私は歯科医師でもなければ歯科衛生士でもありませんので、そこは専門家の方にお願いするとして、ここではざっくりとした説明をします。

虫歯の原因は虫歯菌。正確にはミュータンス菌と言いますが、今回はわかりやすく、虫歯菌で統一します。虫歯菌は・・・歯につくんです。その中でも一番多いのが臼歯です。奥歯のことですね。この奥歯が最も虫歯菌の住み心地の良い歯になります。

赤ちゃんのほどんどは生まれたときに歯は生えておらず、成長とともに前歯から徐々に生えていきます。上の歯10本、下の歯10本の合計20本が乳歯です。そして、この20本のうち中央から数えて4番目と5番目の歯を乳臼歯と言います。この8本の乳臼歯が、虫歯菌のキーワードとなります。

歯の形

臼歯の形、みなさんわかりますか?表面上が平らな形をしており、そこに数本の溝があります。この溝があることで食べ物をすり潰すことができるんです。ちょうど臼(うす)のような役割を持つ歯です。

これに比べて前歯はどうでしょう?薄く、平らな形状をしています。

この臼歯と前歯の形の違いの中で、虫歯と言う点に注目したときに大事なのが、『歯の表面積』の違いです。

前歯は薄くツルツルとしていますが、臼歯は大きく、溝もあります。そのため虫歯菌が住み着きやすいのです。

いつ虫歯菌が住み着くか

前歯から数えて四番目の歯が第一乳臼歯、五番目の歯が第二乳臼歯です。第一乳臼歯が生え始めるのが、個人差はありますが、およそ1歳半ごろ。そして2歳ごろから、第二乳臼歯が生え始めます。そして根っこまでしっかりと生えきるのが、およそ3歳です。

この乳臼歯の生え始める1歳半。この時期こそ、まさに、虫歯の「感染の窓が開く」と言われています。そして、完全に生えきる3歳ごろまでの1年半の間に住み着いた虫歯菌の数が、生涯の虫歯菌の保有数を決めるのです。

ちなみにこの「感染の窓」。実は生涯で3回開きます。

1回目は上述の、乳臼歯の生え始める時期
2回目は6歳臼歯(五番目の乳臼歯の奥に生える永久歯)が生え始める時期。
3回目は12歳臼歯(6歳臼歯のさらに奥に生える永久歯)が生え始める時期。

ご覧になってわかる通り、大事なのは臼歯が生え始めるときです。この臼歯が生え始めて生えきるまでの時期が最も虫歯菌が住み着く時期であり、それはその後に大きく影響します。

どうしたらいいの?

多くの虫歯菌は臼歯に住み着きます。それは、その後どれだけ歯磨きを徹底しても、大きくは変わらないそうです。となるとできることは以下の通りになります。

①虫歯菌を入れない

まず、感染の窓の開いている時期に、虫歯菌が口に入る量をとことん減らします。そのためには食具を分けましょう。冒頭の写真はまさにこれ。食具を必ず分けて欲しいな、と思います。「感染の窓が開いている時期だけでも」というと、なんとなく、ゴールがあるから実践しやすくなるでしょうか。もちろん、ずっと分けられるならその方がいいのですが、それもなかなか大変なので、まずは目標時期を決めましょう。あと、食べ物をかじって与えるのは絶対にやめましょうね。
たまに「今わたし、虫歯ないから大丈夫でしょ?」なんていう人いますが、ダメです。上述の通り、虫歯菌の保有数は幼少の頃に決まっており、大人になって治療してても関係ありません。大人の歯には必ず虫歯菌が住んでいます。その虫歯菌を、お子さんの口の中に引っ越しさせることはやめましょう

②甘いものを控える

結局、虫歯菌がいても、糖を与えなければ虫歯はできません。糖がエサなのです。ですから、感染の窓が開いている期間は甘いものに注意しましょう。とはいえ、この飽食の時代に「食べない」ということは難しいので、食べる場合は時間を決めます。ダラダラ1日に何度も口に糖が入ると、歯の休まる暇がありません。その間、虫歯菌はエサをもらい続けていることになり、どんどん住みつきます。逆に時間を決めて、糖が入らない時間を作ると、エサが無くなり虫歯菌が弱ります。そこで唾液が虫歯菌をやっつけてくれるのです。

③歯磨きをする

歯磨きのタイミング、時間、方法などには諸説あります。専門家の方によって意見が割れているので、ここでは詳細は割愛します。が、糖によって元気になってしまった虫歯菌が、歯を溶かし始める(虫歯を作る)のに最低24時間かかると言われています。ですから1日1回は歯磨きが必要と考えられます。

このように、まずは虫歯菌を口に入れない、入ったとしても虫歯にさせない、という配慮が必要ということがわかります。

歯磨きできないお母さんへ

障害を抱えるお子さんなどで、歯磨きがどうしても難しい子がいらっしゃいます。そういうお子さんの場合、3回の食事毎に歯磨きをすることは大変です。そのため十分歯磨きができておらず、「歯磨きをしないといけないのにできてない」という罪悪感を感じてしまうお母さんが時々いらっしゃいます。

「食後に歯磨きをしないといけない」「しなくてもよい」などのイロイロと説があることはわかっています。しかし、どれが正解であれ、日々ケアや療育に追われているお母さんが、「磨いてあげたいのにできない」という罪悪感を感じることへのフォローは必要だと考えています。

ですから、そういうお母さんには「24時間に1回できればいいですよ」と説明します。そして実際に磨いている様子を確認します。その方法に修正が必要ならお伝えしますし、もう少し楽にできそうな部分があればお伝えはします。
けれど日々のケアや療育、家事育児の分量から、これ以上の負担をかけられない事が多いのも事実です。1日1回でも、お子さんの口に向き合っているならば、そこは肯定したいと思うのです。

虫歯菌については、専門家かからすると、厳密にはこう!というものがあると思います。もっとお伝えしたいことはありますが、今回はこの辺で。

写真一枚から見える、歯の話。楽しんでいただけましたでしょうか?

【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。

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