【びぃどろ日記】自分なら最期まで食べるか?
高齢者の訓練に入っていると、やはり食事を最期まで食べることについて、たくさんの問題があります。今日はそれについて私の雑感を。
食べること好き?
私、実はあまり食べるということに執着はないんですね。食べること好きなんですけど、大好物は何かと聞かれても、特に「う〜ん…トマト?」とか言ってしまうほど。ただ、人と食べに行くことは好きです。食べる行為に興味があるというよりは、食べながら、好きな人と楽しく過ごすことが好き、という感じかなと思います。
あと、昔から手先が器用な方で、料理がとにかく好きです。パンを捏ねたり、ピザ生地を作ったり、カレーをスパイスから作るなんていう凝ったことも好きですし、普通の食事を家族の健康を考えて作る、ということが大好きです。工作に近い感じです。
おかげで、我が家の子供は、食卓におかずが2品とかだと「今日、これだけ?」とか、平気で聞いてきます。作ってみなさいよ…(;一一) という心の声(笑)
まぁそれはさておき、食べることが大好きかどうかって大切だなぁと思います。やはり、食べるためには意欲がないと意味がないのですね。無理やり食べさせるってことはできませんし、自ら食べようとしてくれないと、食べることができない。
栄養を取り込む方法
さて、加齢に伴い、食事の機能が徐々に低下した時、私たちはどうやって栄養を取るのでしょうか?
経口
これはお口から食べることです。食事を口から取ることですね。これは私たちが生まれてからずっと行なっている、生き物としてごく当たり前の活動になります。
飲み物にしても食べ物にしても口から喉、そして胃に入り消化され、腸で吸収される。この流れが食事となります。
経管
これは管(くだ)を伝ってとる栄養です。わかりやすいものが点滴。
点滴は腕から入れるものと、もっと太い血管から入れるものなどがあります。点滴の場合、入れられる栄養量にも限界があったり、針の周囲から感染症の危険性があるなど、いくつかの問題があります。長期間使えないことが多いのが特徴です。
また、病院や施設でよく見るのが、お鼻から入れるチューブ。あのチューブは鼻から入れて喉を通り、胃のなかに繋がっています。チューブを伝って栄養を入れるんですね。お子さんの場合は、この管が非常に細いので、注入するものによっては詰まりやすくなるため、注意が必要です。
鼻からのチューブを長期間使用していると、飲み込みの力に対して悪影響を及ぼすことがあったり、抜けるたびに確実に胃へ挿入できているかの確認が大変であるという点などから、長期に及んで経管栄養が必要である方の場合、胃に直接管を通す「胃瘻(いろう)」という選択が取られるようになります。また胃ではなく“腸”に入れる「腸瘻」というものもあります。これは、鼻からのチューブに比べて、管も太いため、比較的詰まりにくく、ドロッとした半固形の液体を注入することができます。場合によってはミキサー食を入れることもできます。
栄養を摂るという視点
こういったことから、口から食べられなくなると、管を使った栄養確保が主流になります。さて、みなさんなら、どの手段を選ぶのでしょうか?
以前も書きましたが、私は嚥下障害を患ったことがあります。術後の後遺症なのですが、唾液すら飲めなかったので、軽度ではありません。一過性のものでしたが、担当の医師・看護師が嚥下障害に対して無理解で、自力で対応せざるを得ない状況となったため、1月の雪の降る中、手術翌日の身体で隣のコンビニに駆け込み、ゼリーやプリンなどの食べられそうなものを買いに行ってました。
嚥下障害の恐怖っていうものは、想像を絶するものです。
そう考えると、むせても口から食べ続けるという選択肢は、私にはできない。しかし、それでも食べるものを探したわけですから、「食べる手段を模索」することは誰もが求める部分なのだと思います。
そして、それは私たちSTにとって非常に重要な役割なんだな、と感じたわけです。最大限模索した上で、口からだけでは不可能だと判断されれば、管を使った別の方法も検討しないといけません。「胃瘻でも楽しみレベルで食べられればいいよね」という安易な言葉は使いたくない。食事は食事として存在し、足りない分を胃瘻で補う。そういうかんがえが必要だな、と感じます。
自分の人生において、いつまで食べられるか、そしていつまで食べたいか。それを考えておくことは重要です。
だって、人はいつ障害を患うのかはわからないのですから。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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