【だんらんストーリー】車椅子と花火とりんご飴
一昨日に引き続き、お孫さんにまつわるお話です(昨日の記事「孫に絵本を読みたい」⇒☆)
あるご夫婦のお話です。ご主人が数年前に難病の診断を受け、現在要介護2。奥様が日々献身的に介護や自主訓練をしながら、ご自宅で夫婦二人ですごしていらっしゃいます。近隣には長男ご家族も住まわれており、介護環境は比較的整っているお宅です。
私は、発音の障害(構音障害)があるため、定期的なフォローをしていました。
ご主人、食事会へ行く
このご主人さんがある日、ご友人との食事会へ夕方出かけることになりました。ときどき外出の用事が入るのですが、その都度奥様が送迎をしなければなりません。今回もその食事会の会場まで、奥様が送迎をされることになりました。とはいえ、いくら気心の知れたご友人との食事会と言っても、ご主人さんは病気の影響で、体力がやや衰えているため、長時間の外出は負担。すこし食事をしたら電話をするから迎えに来てほしいと仰っていました。本人さんの負担を考慮して、いつでも切り上げて帰れるよう、結局奥様はその食事会会場の近くで待機することに。
孫とお祭り
その食事会の当日、ちょうど会場の周辺で大きな夏祭りと花火大会がありました。せっかくの花火大会。長男家族も一緒に行って、奥様と一緒にお祭りと花火大会を楽しむことになりました。食事会が終わるまでの時間を持て余していた奥様は、大変ホッとしたとのことでした。
普段はご主人の介護追われ、つきっきりの奥様も、この時間は介護から少し離れることもでき、お孫さんとの交流が図れることが、何より嬉しそうでした
花火大会が始まるとき
お祭りを久しぶりに堪能し、いよいよ花火が始まるころ、奥様の携帯電話が鳴りました。ご主人さんからの電話で「疲れたから帰る」とのこと。
花火が打ち上がる直前。奥様は、ゆっくり見ることができなかったと残念に思いながら、ご主人さんのお迎えに行きました。ところが駐車場で長男家族と合流した際に、お孫さんがこう言ったのです。
「まだ、りんご飴食べ終わってないから、おじいちゃん、花火見よう」
車椅子と花火とりんご飴
まだ幼いお孫さんは、「疲れた」と言いながら、ちゃっかり車椅子に座るおじいちゃの膝に乗り込みます。
膝の上でお孫さんがりんご飴を食べ始めるものだから、さすがのご主人さんも『疲れたから帰る』とは言えなくなりました。
奥様は車いすの後ろに立ってハンドルを握りながら、ご主人は膝でりんご飴をなめるお孫さんの肩越しに、それぞれ花火を見ることができました。
夏祭りは人が多くて、とても車椅子で回ることはできません。けれど、充分夏祭りを堪能したご夫婦。さすがに翌日は疲れが出たようでしたが、この夏祭りの出来事についてお話をする奥様と、その奥様の話を聞くご主人を見ていると、楽しい花火大会だったんだな、と想像できました。
介護は日常。でも…?
介護は日常のこと。やめることはできません。けれど、どきどきは非日常の世界へ出て、良い時間を過ごしてほしい。その為のキーワードはやはり「孫」なのかもしれませんね。
家に閉じこもることはやめて
受け身ですごすことはやめて
家の外に目を向けてみましょう
きっと、今より生活にちょっと彩りが加わる。
そんな気がするのです。
【長岡菜都子(だんらんコーディネーター)】
リハビリテーション専門職である言語聴覚士の国家資格を所有。病院勤務を経て、訪問看護ステーションに入職。以後12年間で、訪問リハビリテーションを学ぶ。対象は乳幼児から高齢者まで幅広く、病気や障害を抱えながらも、にいかにして家族とともに充実した温かい生活を送れるかにこだわり、支援している。
現在は病気や障害を抱える当事者に対し、『個別』ではなく、家庭や関係施設へ『戸別』に訪問し、主に「はなすこと」「たべること」に関する、赤ちゃんの育み支援、こどもの学び支援、成人・高齢者の生活支援を行っている。
その他、医療・福祉・介護・教育施設等への外部講師等も行い、「はなすこと」「たべること」のバリアフリーを目指し活動中。
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